北海道研究林 技術職員 林 大輔
社会貢献の一環として北海道研究林では初めて,地域の小中学生を対象としたミニ公開講座を開催した。
日程は小中学生が参加しやすいよう,夏休み期間の週末とした。内容は林内への移動がないこと,危険が少ないこと,作業は簡単で結果が分かりやすいことなどから草木染めに決定した。しかし,誰も草木染めについて詳しい者はいなかったため,関連書籍やウェブページなどからの情報収集が必要となった。材料に関しても草木以外は一から買い揃えることとなった。
広報については両町やその教育委員会の協力を得て,町の広報に掲載してもらったほかポスターの掲示も行った。さらに,地元の釧路新聞社と北海道新聞社にプレスリリースを行い,それぞれ7月14日付,7月23日付で募集記事が掲載された。
日程 | 時間 | 参加人数 | 人工数(準備含む) | 材料費 | |
白糠区 | 7月24日(土) | 10:00~14:00 | 13人 | 30人・日 | 35,808円 |
標茶区 | 8月 1日(日) | 10:00~14:00 | 10人 |
当日は,まず草木染めの手順を説明した後,材料集めを行った。途中,樹木の説明も織り交ぜながら構内を全員で歩き,子供たちに材料を選んでもらった。白糠ではホオノキの葉とカラマツの球果を使い,標茶では職員の誘導もあり草木染めの材料として知られているオニグルミの果実とオオヤマザクラの樹皮を集めた。その後,管理棟に戻って小石や輪ゴムで染め抜く模様を作り,実際に布を染める作業を行った。樹種や部位,媒染液によって発色は様々なので,どんな色が出るか興味深そうであった。必ずしも思い通りの色が出るとは限らないのが草木染めの醍醐味ではあるが,その辺をうまく伝えられないとがっかりさせる危険もある。今回はお母さんたちのフォローもあり雰囲気よく行うことができた。
公開講座の参加者は主に町内在住者であったが,研究林には初めて来たという人もおり,地元の森林に触れて興味を持ってもらう機会を提供するという点でも有意義なものであったように感じる。スタッフ側としても伝え方やサポートの仕方など学ぶべき点は多く,今後もこういった機会を持てればと思う。
初めてということもあり手探りの中での準備で,人工数,材料費ともにかさんだが,継続的に実施することで今後はより効率的に実施できると思われる。ただマンネリ化しないよう,内容の検討と実施後の振り返りをその都度行うことが求められる。今回の場合,本来の対象である子供たちが終盤飽き始めた一方,付き添いのお母さん達の方が熱心に参加していたように感じられた。対象とする層に合致したプログラムとなるよう注意したい。スタッフも単に作業を円滑にこなすために指示を出すだけではなく,限られた時間の中で参加者が主体的かつ科学的にそして安全に取り組めるよう,関わり方を工夫していく必要があるだろう。
年報8号 2011年12月 p.7
(参考)イベント報告(北海道研究林フィールド日誌)