尼崎小田高校臨海実習

文科省SPP事業による尼崎小田高校臨海実習(於瀬戸臨海実験所)実施報告

海洋生物進化形態学分野 宮崎勝己

 8月2日から4日にかけ、フィールド科学教育研究センター海域ステーション瀬戸臨海実験所に於いて、兵庫県立尼崎小田高校サイエンスリサーチ科1・2年生14名が参加した臨海実習を行った。この実習は、文部科学省サイエンス・パートナーシップ・プログラム事業の「教育連携講座」として採択されたもので、「海洋生物の多様性」と題して、実験所周辺の磯観察と海産無脊椎動物の発生観察を中心に行った。
 磯観察では、実験所の田名瀬英朋助手を講師として、2名のTAのアシストのもと実験所周辺の番所崎を一周しながら、潮間帯に棲息する各種生物の観察・採集を行い、採集した生物については、実験所に持ち帰り同定作業を行った。尼崎小田高は、昨年夏に下見的な実習を行ったが、その時は小潮の時期しか日程がとれず、磯観察での収穫も散々であった。今回はうまく大潮の日程がとれ、南紀の豊かな生物相を実地に体験することができ、特に昨年度から引き続き参加した生徒達には大変好評であった。
 発生の観察は、宮崎が講師となり、同じく2名のTAのアシストのもと、ウニとゴカイを材料とした初期発生の観察を行った。それぞれの動物について、配偶子の採取から生徒達に行わせたが、実習の直前に襲った台風10号による荒波の影響からか、発生観察に最も適したコシダカウニが全く放卵・放精しなかった。しかしこの事は、次の卵割を待って夜遅くまで顕微鏡をのぞいた事と共に、生物の観察はあくまでその生物の都合に合わせないといけないという、ともすれば我々もつい忘れがちな研究の基本を、図らずも生徒達に教えることとなった。
 最終日には、田名瀬助手が講師となり水族館の見学を行ったが、特に裏方の見学では、水族館で飼育・展示しているたくさんの生き物達の維持・管理が、多くの人の労力と様々な工夫によって支えられていることを、実感してくれた。
 瀬戸臨海実験所では、昨年度から高校生の実習を本格的に受け入れるようになったが、まだまだ試行錯誤的なところがあり、今回の実習でも多くの課題点が見出された。本実習の様な、大学と高校・中学との連携による理科教育の実践は、今後ますます重要度を増すことは間違いなく、今後もよりよい実習を目指し創意工夫していきたい。

ニュースレター2号 2004年11月 教育ノート