新しい里山・里海 共創プロジェクトを始動

森林情報学分野教授 舘野 隆之輔

 京都大学フィールド科学教育研究センター(センター長:朝倉 彰、以下 京大フィールド研)と公益財団法人イオン環境財団(理事長:岡田元也、以下イオン環境財団)との連携事業「新しい里山・里海 共創プロジェクト」が2022年4月から4年間の予定で、始動しました。本プロジェクトの推進のため、イオン環境財団と連携協定を締結し、森里海連環学に基づく新しい里山・里海の共創に向けた教育・研究・社会連携活動を共に進めており、具体的には以下のような3つの柱にそった活動を進めています。
(1)里山・里海の現状を知る
 各地域の里山・里海の自然・文化的特徴を理解し、持続可能な里山・里海の現状を知るための方法を開発します。多様性調査、環境DNA、化学分析等による自然科学をベースにした調査だけでなく、アンケートや聞き取り調査などの社会科学をベースにした調査を通じて、里山・里海の地域ごとの特徴を評価します。各地域の里山・里海で活動する方々と協力し、可能なかぎり市民参加による調査や地域ワークショップを実施し、将来は自律的に管理していける体制づくりにつなげていきます。
(2)モデルとなる里山・里海をつくる
 フィールド研の施設を活用して、各地域の里山・里海の知恵を収集し、最新の研究成果等も取り入れた新しい里山・里海づくりを市民の皆さんと一緒に実践しつつ、教育・研究・社会連携活動に活用していきます。また、小さいお子さんからお年寄り、障がいのある方など誰もが参加できる里山・里海づくりのあり方を模索していきます。さらに再生エネルギーの活用やDX技術の活用など先進的な里山・里海づくりを目指して活動を進めていきます。
(3)新しい里山里海を創る人たちとつながる
 近畿を中心に里山・里海の活動団体に声をかけ、勉強会や交流会を開催し、様々な活動を繋ぐコンソーシアムをつくります。また里山・里海に関心を持つ幅広い世代の人が、各地域の活動に参加できる仕組みをつくります。さらにフィールド研のネットワークを活用して専門家の派遣や地域の課題に対して科学的な視点で取り組みを持続するための様々な支援を行います。
 プロジェクトが本格的に開始してから約1年ですが、2022年度は、1月の瀬戸臨海実験所・白浜水族館でのイベントに加え、2023年度に瀬戸臨海実験所で実施する畠島のビーチクリーン、舞鶴水産実験所で実施予定の柴漬けイベント、上賀茂試験地で実施予定の里山おーぷんらぼなどの企画立案や準備を進めました。さらにプロジェクトでは、里山里海勉強会を年4回程度開催していく予定で、2022年度は2回、1月にオンライン開催、3月に益川ホールとオンラインのハイブリッドで開催しました。

年報20号 2022年度 主な取り組み