投稿者「waka2」のアーカイブ

雪化粧の新年

2022年がスタートしました。

昨年末は寒波の影響で10㎝程度の積雪がありましたが、その後は穏やかな天気が続き、新年仕事始めは積雪の少ない状態でしたが、1月6日は早朝から雪が降り積もり、昼頃までに7㎝程度の積雪になりました。

和歌山研究林は他の研究林と比べて積雪は少ないですが、谷底にあることから冬季は日が当たらず冷え込みも厳しいため、一旦積雪があるとなかなか解けません。さらに、路面に解け残った雪があると、夜間の冷え込みにより凍結し、車両で事務所から公道に出る急傾斜の取り付け道を登る際にスリップして危険なこともあるため、こまめな除雪が必要になります。今回の雪は午後には止み、これ以上の積雪はなさそうですが、なるべく路面に雪を残さないよう丁寧に除雪を行いました。

本年も災害や事故のない一年になりますよう、よろしくお願い申し上げます。

※冬期間において和歌山研究林へは、冬用タイヤ等の装備でお越しいただくことを推奨いたします。

雪化粧の事務所構内

雪化粧のモミ・ツガ林

雪化粧のさがり滝

除雪後の事務所構内

 

避難訓練の実施

12月17日に避難訓練を実施しました。

和歌山研究林の事務所は、河川の近くにあるため、大雨や台風による土砂災害が発生しやすい箇所に位置しています。さらに僻地にあるため、道路が遮断された場合は孤立する恐れもあります。このため、大雨などの災害を想定した避難訓練を定期的に実施しています。

今回は集中豪雨によって河川の水位が急激に増水し、事務所やそれに通じる道路における土砂災害の危険性が高まった状況を想定し、事務所から第一避難場所への車両による迅速な移動を想定した避難訓練を行いました。

職員全員で従来より作成されている避難マニュアルを確認した後、訓練を開始しました。雨量や河川の水位状況を確認して避難計画や役割分担を決め、それぞれが避難道路の安全確認、事務所内の電気・ガス設備の停止、戸締りや持ち出し物品などの確認を行った後、集合場所に集まり安否確認をし、車両により避難場所へ全員で移動しました。

訓練後は振り返りを行い、実際の避難時に想定される問題箇所の確認、無線や携帯電話の通信状況の確認、より迅速な状況判断の必要性などについて職員全員で共有しました。

近年はこれまで経験したことがない集中豪雨が発生する頻度が高まり、大雨に対する備えが重要となり、より迅速な状況判断が必要となります。山地にある研究林では常に災害の発生する恐れがあり、このような訓練を通じていざという時に備えています。

 

 

ブレーカーの電源停止

高台の集合場所に集合して、点呼

避難場所に無事到着しました

避難経路上での危険個所を確認します

モニタリングサイト1000事業の毎木調査

12月2日より、環境省モニタリングサイト1000事業での毎木調査を実施しています。
モニタリングサイト1000とは全国1000カ所程度のモニタリングサイトにおいて、生態系の指標となる生物種の個体数変化等のデータを長期間継続的に収集していく事業です。
和歌山研究林では、その事業における「森林系コアサイト」として2005年より9林班八幡谷学術参考林(モミ・ツガの天然林)内に1haの調査プロットが設置されており、毎木や落葉・種子、甲虫、鳥類の調査を実施しています。

毎木調査は毎年実施しており、プロット内に生育する胸高周囲長が15cm以上のすべての樹木を対象に、樹種、太さ、位置を記録しています。前回の調査と同じ個体について、生死の確認、胸高周囲長の測定、新たに周囲長15cm以上になった個体の記録を行います。※胸高周囲長とは地上1.3mの位置での幹の周囲長で、樹木の太さの指標となり、毎回同じ位置で測定できるよう幹に目印(ライン)をつけています。

また、測定位置には釘などでタグをつけることはせず、マーカーで個体番号や測定ラインを記入するようにし、幹に傷をつけないよう配慮しています。タグは樹体への影響が少ないと思われる谷側の地際に釘で取り付けています。

和歌山研究林のサイト内には約1,600本の調査個体が生育しており、3日程度かけて調査を行います。
調査は3.4人の職員が協力して行い、測定者(2.3名)、記録者(1名)に分担して行います。
中には胸高周囲長が3mを超える個体もあり、メジャーを幹に巻き付けて測定するのが大変なこともあります。

このような地道な調査を長期間続けることにより、森林や生態系の動態の解明につながる一役を担っています。

 

調査は測定者と記録者に分担して行う

幹にマーカーで個体番号と測定位置を記入する

記入された番号と測定ライン

太い個体は幹にメジャーを巻き付けるのが大変

新たな個体は地際にタグを釘で取り付ける

調査地の林況(モミ・ツガが優占する)

安諦小学校の森林体験学習

令和311月19日に有田川町立安諦小学校5年生よる森林体験学習を行いました。今回が初めての研究林来研ということで、10林班茗荷平に集合し、まずは技術職員から研究林の概要説明、天然林と人工林の違いや林業の説明、樹木の見分け方などの説明を行いました。

それから、隣りの人工林に移動し、職員からノコギリの使い方や間伐する木の選び方、木の倒し方や倒す方向の確認、安全確保などの説明を受けたあと、ヒノキの木を1本伐採しました。ノコギリの切れ込みを確認しながら慎重に切り進め、狙ったとおりの方向に伐倒できました。伐倒後は切り口の確認をしたり、ヒノキの匂いを体感しました。丸太切りはスギとヒノキの2種類を用意し、輪切りにした丸太の年輪を観察したり、チェーンソー体験をしたり、コースター作成をしました。全校生徒へのお土産にするということで、沢山のコースターが出来上がりました。

「木を切るのは大変だったけど楽しかった」、「お土産がいっぱいできてよかった」などの感想をくれて、初めての研究林を楽しんでもらえてよかったです。これをきっかけに地域でも森林や木に興味を持ってもらえたらうれしく思います。今回は5年生1人の参加となりましたが、今度は皆さん一緒に楽しんでいただけるよう全校でのご参加をお待ちしております。

 

職員による周辺の森林についての説明

間伐体験での追い口切りの様子

最後は押して倒しました

ノコギリでの丸太切り体験

サンドペーパーできれいに磨きました

完成したコースター(全校児童分)

八幡小学校の森林体験学習(2021年秋)

令和311月18日に有田川町立八幡小学校5年生よる森林体験学習(2021年秋)が行われました。これは例年、八幡小学校の5年生を対象に「総合的な学習の時間‐森のことを知ろう(環境)‐」の授業の一環で春と秋の年2回実施されています。6月に行われた春の部では天然林での樹木観察を行い、今回の秋の部では人工林での間伐体験を行いました。

10林班茗荷平周辺の人工林でノコギリを使った間伐と丸太切り体験を行いました。始めに技術職員による説明を受け、天然林と人工林の違いや人工林の手入れについて学んだ後、間伐と丸太切りの体験を行いました。それぞれの生徒に職員が付いて、ノコギリの使い方や木の倒し方、安全に関する注意などを受け、間伐はひとり1本ずつ伐採しました。丸太切りでは輪切りにした丸太の年輪を数えたりサンドペーパーできれいに磨いてコースターに仕上げました。

「真っすぐ切るのが難しい」、「しんどいなあ」、「疲れた」などと言いながらも木が倒れた時には歓声が上がり、大変ながらも楽しく作業していました。この取り組みを通じで、木を切ることの大変さや間伐の必要性、木とふれあうことの心地よさなどを感じてもらい、森林や木材に関する興味を持ってもらえたらうれしく思います。

ノコギリの使い方の説明

木の倒し方の説明

間伐作業の様子1

間伐作業の様子2

チェーンソー体験

コースター作成

和歌山県農林大学校 の実習

令和31112日に和歌山県農林大学校林業研修部による実習が行われました。

午前9時半に護摩さんスカイタワーに集合し、長谷川准教授による開講の挨拶と研究林の概要説明を行った後、研究林内に移動し長谷川准教授および技術職員の案内により、5.6林班尾根部の冷温帯天然林を歩き、樹木観察を行いました。その後、10林班の新植地や新設した作業道を歩き、獣害防除や作業道の路線選定や維持管理に関する解説が行われました。続いて4林班の広葉樹見本林へ移動し、広葉樹人工林の育成に関する解説が行われました。

開講の挨拶と概要説明

天然林での樹木観察

植栽木に設置した獣害防止シェルターの解説

作業道における災害復旧箇所の解説

作業道における崩壊危険個所の解説

広葉樹見本林での解説

【お知らせ】当研究林の勝山技術専門職員が森林・林業交流研究発表会で発表します

令和3年11月16日(火)に近畿中国森林管理局主催の「令和3年度森林・林業交流研究発表会(1日目)」において、「大学演習林における地域貢献-地域活性化のための人材育成を目指して-」と題してオンラインによる技術発表を行いますので、興味のある方はご視聴ください。

当日はWEBによる視聴が可能です。詳しくは近畿中国森林管理局のホームページをご覧ください。(森林・林業交流研究発表会

環境系プロジェクト(有田川水質調査)

和歌山研究林では、環境系プロジェクト研究の一つとして、2005年より有田川流域の水質調査を継続して実施しています。研究林のある有田川源流部(支流の湯川川)に始まり、最下流の有田市古江見に至る約60kmの区間に12か所の定点採取ポイントを設け、定期的に水質測定とサンプルの採取を行っています。

10月27日に水質調査とサンプル採取を行いました。pHとEC(電気伝導度)はその場で測定します。また、フィルターでろ過したサンプル用の河川水はフィールド研に送付し、より高度な分析が行われます。

このような調査を長期間継続して行うことにより、森林や農地・都市部から河川へ流れ出す様々な物質の動きを知ることができ、長期的な環境の変化を把握することにつながります。

 

 

採取ポイント(上流部)

採取ポイント(下流部)

pHとECの測定

サンプルの採取

総合的な学習の時間「SIMIZUタイム」(森林ウォーク2021・秋)

令和3年10月20日に県立有田中央高等学校清水分校との共催で総合的な学習の時間「SIMIZUタイム」(森林ウォーク2021・秋)を行いました。6月に行われた森林ウォーク2021・春に引き続き、今年度2回目の実施となります。春は主に天然林を観察し、森林の植生や垂直分布などについて学習しましたが、秋は人工林や作業道などを観察し、森林と人との関わりについて学習しました。

午前9時半に研究林の10林班茗荷平に集合し、長谷川准教授による解説で周辺の人工林を観察しました。間伐の進んだ林と遅れている林を比較し、立木の間隔や年輪を実際に測定することにより、密度や成長の違いを確認することができました。また、今年度春に植栽した新植地を見学し、植栽木の成長や獣害の防除方法について学びました。

続いて、10林班に新設した作業道を歩き、人工林における路網の必要性を学ぶとともに、作業道における崩壊危険個所の見分け方や路肩の補強工法などの解説を受け、路線選定の重要性についても学びました。同時に周辺部のモミ・ツガ林天然林における調査プロットについての解説や、長期的な視点で研究することの重要性を学びました。

その後、4林班へ移動して昼食をとり、午後は広葉樹見本林(コブトチ)を見学しました。こちらの広葉樹見本林は15種ほどの広葉樹が植栽されており、30年程度経過した広葉樹の人工林です。様々な樹種の特徴や用途を解説するとともに、それぞれの成長過程や林相の違いを比較することができました。

その後、研究林事務所に移動し、長谷川准教授による講義が行われました。昨今の森林を取り巻く状況や森林資源の活用について解説するとともに、将来に向けて人と森林との新たな関わり方の可能性を考えていく必要があることを学習しました。

立木の間隔を測定し、密度を調べる

年輪を測定し、成長過程を調べる

植栽木に設置した獣害防止シェルターの解説

作業道における路面補強や工法の解説

コブトチ広葉樹見本林の見学

長谷川准教授による講義

和歌山研究林ミニ公開講座(京大ウィークス2021)の開催

10月9日に和歌山研究林ミニ公開講座(後援:有田川町教育委員会)を開催しました。

このイベントは、本施設の存在および意義、教育・研究内容を地域を中心とした一般市民の皆さまに知ってもらうことを目的に、2015年から開催しているものです。今年も昨年と同様、新型コロナウイルスの影響を考慮し、感染防止の観点から定員を例年より少ない10名にして企画を行いました。今回は定員を超える応募があったため、抽選の結果、当選された10名の方々にご参加いただきました。

当日は、有田川町清水行政局駐車場に集合し、受付・検温を済ませた後、マイクロバスで護摩山スカイタワーを経由し、研究林内の観察コースに向かいました。当研究林の長谷川尚史准教授や技術職員の案内により、主に標高の高い尾根部で自然観察を行いました。当日は好天に恵まれ、歩くとやや汗ばむほどの陽気で快適に観察コースを散策できました。参加者はこの地域特有の様々な樹木の特徴や、森林の成り立ち、木材資源としての利用と課題などに関して理解を深めました。

参加者からは、「知らない植物の種類を多く知ることができた。」「植物と地形の関係がよく分かった。」「説明がわかりやすくとても勉強になった。」などの感想が寄せられ、イベントは好評のうちに終了しました。

 

清水行政局での開校式

護摩山スカイタワー周辺部の解説

ヒノキ人工林内での解説

立ち枯れ木の役割に関する解説

流域源頭部の地形に関する解説

ブナの大木の解説

モミとツガの見分け方を解説

ヒメシャラやミズメが優占する二次林内を歩く