月別アーカイブ: 2021年10月

総合的な学習の時間「SIMIZUタイム」(森林ウォーク2021・秋)

令和3年10月20日に県立有田中央高等学校清水分校との共催で総合的な学習の時間「SIMIZUタイム」(森林ウォーク2021・秋)を行いました。6月に行われた森林ウォーク2021・春に引き続き、今年度2回目の実施となります。春は主に天然林を観察し、森林の植生や垂直分布などについて学習しましたが、秋は人工林や作業道などを観察し、森林と人との関わりについて学習しました。

午前9時半に研究林の10林班茗荷平に集合し、長谷川准教授による解説で周辺の人工林を観察しました。間伐の進んだ林と遅れている林を比較し、立木の間隔や年輪を実際に測定することにより、密度や成長の違いを確認することができました。また、今年度春に植栽した新植地を見学し、植栽木の成長や獣害の防除方法について学びました。

続いて、10林班に新設した作業道を歩き、人工林における路網の必要性を学ぶとともに、作業道における崩壊危険個所の見分け方や路肩の補強工法などの解説を受け、路線選定の重要性についても学びました。同時に周辺部のモミ・ツガ林天然林における調査プロットについての解説や、長期的な視点で研究することの重要性を学びました。

その後、4林班へ移動して昼食をとり、午後は広葉樹見本林(コブトチ)を見学しました。こちらの広葉樹見本林は15種ほどの広葉樹が植栽されており、30年程度経過した広葉樹の人工林です。様々な樹種の特徴や用途を解説するとともに、それぞれの成長過程や林相の違いを比較することができました。

その後、研究林事務所に移動し、長谷川准教授による講義が行われました。昨今の森林を取り巻く状況や森林資源の活用について解説するとともに、将来に向けて人と森林との新たな関わり方の可能性を考えていく必要があることを学習しました。

立木の間隔を測定し、密度を調べる

年輪を測定し、成長過程を調べる

植栽木に設置した獣害防止シェルターの解説

作業道における路面補強や工法の解説

コブトチ広葉樹見本林の見学

長谷川准教授による講義

和歌山研究林ミニ公開講座(京大ウィークス2021)の開催

10月9日に和歌山研究林ミニ公開講座(後援:有田川町教育委員会)を開催しました。

このイベントは、本施設の存在および意義、教育・研究内容を地域を中心とした一般市民の皆さまに知ってもらうことを目的に、2015年から開催しているものです。今年も昨年と同様、新型コロナウイルスの影響を考慮し、感染防止の観点から定員を例年より少ない10名にして企画を行いました。今回は定員を超える応募があったため、抽選の結果、当選された10名の方々にご参加いただきました。

当日は、有田川町清水行政局駐車場に集合し、受付・検温を済ませた後、マイクロバスで護摩山スカイタワーを経由し、研究林内の観察コースに向かいました。当研究林の長谷川尚史准教授や技術職員の案内により、主に標高の高い尾根部で自然観察を行いました。当日は好天に恵まれ、歩くとやや汗ばむほどの陽気で快適に観察コースを散策できました。参加者はこの地域特有の様々な樹木の特徴や、森林の成り立ち、木材資源としての利用と課題などに関して理解を深めました。

参加者からは、「知らない植物の種類を多く知ることができた。」「植物と地形の関係がよく分かった。」「説明がわかりやすくとても勉強になった。」などの感想が寄せられ、イベントは好評のうちに終了しました。

 

清水行政局での開校式

護摩山スカイタワー周辺部の解説

ヒノキ人工林内での解説

立ち枯れ木の役割に関する解説

流域源頭部の地形に関する解説

ブナの大木の解説

モミとツガの見分け方を解説

ヒメシャラやミズメが優占する二次林内を歩く

固定標準地と歩道巡視

研究林内の9林班で実施された和歌山県による保育間伐事業地の確認調査を行いました。

事業地内に2か所の固定標準地が設けてあり、歩道を歩いて標準地まで向かいます。歩道は毎年整備していますが、総延長が非常に長いため、全区間を整備するのは難しい状況です。近年多発する災害の影響もあり、所々で崩壊地などがみられ、このため通行の危険な個所もありました。歩道が消失している箇所もあり、行先を見失いながらも、何とか2か所の固定標準地にたどり着き、無事に調査ができました。当研究林は急斜面が多いことに加え、地盤がもろく歩道以外を歩く場合は滑落や落石の危険性が常にあります。このため、安全に林内を移動するためには歩道の整備が欠かせないことを実感しました。

 

人工林内の歩道を下る

崩壊地を横切る

固定標準地の調査木

倒木などにより歩道が分断されている

保育間伐後の固定標準地

秋の花 アケボノソウが花盛り

横断排水溝掃除

秋になり、台風シーズンが到来しています。台風に備えて、林道を巡視するとともに横断排水溝の掃除を行いました。

横断排水溝に土砂が詰まっていると、適切な場所で雨水が排出されず、路面を流れる雨水の流量が増し、路面の浸食や亀裂などの被害が発生する恐れがあります。このため、大雨のシーズンには定期的に排水溝の掃除を行う必要があります。

和歌山研究林では林道の総延長が8km程度あり、多数の横断排水溝が設置されています。これらをすべて見回り、土砂が詰まった箇所があれば手作業で除去します。かなりの重労働ですが、このひと手間を怠ると大きな被害になる場合もあるので、地味ながらも重要な作業です。

 

作業前(排水溝に土砂がたまっている)

手作業で土砂を除去する

作業後