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安諦小学校の森林体験学習(2022年春)

令和4年5月19日に有田川町立安諦小学校5年生を対象に森林体験学習を行いました。技術職員の案内で、研究林内2.3林班の観察コースを散策しながら、樹木の葉の違いによる見分け方について説明を行い、天然林に生える10種類ほどの樹木を覚えてもらいました。「葉っぱを見たら木の名前が調べられることが分かった。」「知らない木の名前を覚えることができて森についての興味がわいてきた。」などの感想をもらい、うれしく思いました。

今回の森林学習は、都合により午前中だけの授業になり、識別テストをする時間がとれなかったため、テスト用の枝葉のサンプルを持ち帰って小学校でテストをしてもらいました。テストの結果がどうなったか、解答用紙が届くのが楽しみです。

 

ヒメシャラの肌触りを確認

葉による見分け方の解説

保育間伐の実施

1月よりスギ・ヒノキの人工林(6林班、30年生)において保育間伐を実施しています。
適正な密度管理を行うことにより、込み合った林内に適度な空間や日射が確保され、残された樹木の健全な成長を促します。
2月は雪や風の影響で実施できない日が多くありましたが、3月に入ってからは安定した天候が続いています。
引き続き、安全に留意して作業を進めてまいります。

現場までの作設した歩道を進む

チェーンソーによる伐採

伐採木を玉切りする

作業中の様子(左が作業前、右が作業後)

作業前の真っ暗な林内

作業後の明るくなった林内

水道設備のメンテナンス(2)

前回報告した水道設備のメンテナンス(1)により、水道の濁りと水流は回復しましたが、その数日後には簡易水洗トイレの水が出にくくなったので、トイレタンクのフィルター掃除を行いました。

トイレタンク内にあるフロート部の管の入口にメッシュのフィルターがあるので、フロート部を取り外します。フィルターに詰まった砂などをメッシュを破損しないように丁寧に取り除きました。フロート部などを元通りに設置し、水漏れと通水を確認して作業完了です。

和歌山研究林は森林の教育・研究のため、事務所も森林に囲まれた僻地に設置されており、町からは遠く、専門業者の対応もすぐには受けられない環境にあります。このため、利用者の不便を軽減するためには、職員は細かな部分の保守についても早急に対応しなければなりません。

タンクのフタを開ける前に蛇口を取り外す

フタを開けてタンク内のフロートを取り外す

ゴミがたまったフィルター部分

フィルター部分を掃除する

きれいになったフィルター

元通りに設置して通水確認

水道設備のメンテナンス(1)

和歌山研究林では上水道がなく、近くの沢から直接水を引いて使用しています。このため、細かい砂などが常に流れ込んでくる状態のため、建物に入る直前に設置している砂取り器・浄水器・除菌器を通して使用しています。これらの設備は定期的なメンテナンスを行っています。

冬期は凍結防止のため、ほとんどの蛇口から水を流している状態のため取扱水量が多くなり、浄水器のろ過機能が追い付かず、水の濁りや詰まりなどが発生しやすくなります。今回は水の濁りと水流の減少が発生したので、砂取り器と浄水器のフィルター掃除を行いました。いずれのフィルターにも多くの泥や砂がたまっていました。これらのフィルターを掃除したり、きれいなフィルターに入れ替えをして、元通りに設置しました。このような作業は一般的な上水道を使用しているところでは行わないと思いますが、上水道のない和歌山研究林ならではの作業であると思います。

左から砂取り器、除菌器、浄水器

砂取り器のふたを外してフィルターを掃除する

浄水器の中は多くの泥が付着していた

浄水器のフィルターを取り出して掃除する

きれいなフィルターを配置する

水が漏れないように浄水器のふたを締め付ける

2021年度 ウッズサイエンス閉校式

2022年1月11日に有田中央高等学校清水分校でウッズサイエンスの閉校式を行いました。

この授業は、和歌山県立有田中央高等学校清水分校との共催で3年生を対象に2002年度より開講しており、清水分校の学校設定科目(通年)の一つとして地域の主要な産業である林業や、身近な環境である森林について学習することを目的としています。今年度からは有田川町関係機関で結ばれた四者協定の一環としても行われました。

閉校式では、和歌山研究林長の徳地教授による森林における物質の動態に関する講義、それに関連した雨水などの水質計測実習が行わました。最後に1年間の授業を振り返り、レポートを作成してもらいました。

閉校式での徳地林長による講義

計器による水質計測

今年度のウッズサイエンスでは4月20日の開校式から閉校式まで全22回の授業を行いました。1学期は主に分校およびその周辺で行われ、森林や地域の林業に関する講義、研究林で行っている研究補助のほか、測量や測樹で使用する計測機器の使い方、林業で使用するチェーンソーなどの機械器具の操作について学習しました。2学期は主に研究林で行われ、1学期で学んだ内容を生かして、林内でのプロット設定や毎木調査、チェーンソーを用いた伐採体験、油圧ショベルなどの大型機械の操作体験、樹木識別や調査データのまとめ方など、森林や林業に関する幅広い分野について学習しました。

今年度は女子学生1名と少ない受講生でしたが、とても意欲的に取り組んでくれました。まとめのレポートでは、「コンパスやレベルの設置が難しかった。」「三角関数を駆使して樹高を測定する過程は達成感があった。」「チェーンソーや大型機械の操作など貴重な経験ができて楽しかった。」「林業は予想以上に繊細で、体力のいる仕事であると実感した。」「樹木の見分け方や京大の森の特徴を詳しく知ることができて勉強になった。」「森・里・海という視点で自然の形を知ることは新鮮であった。」などの感想をいただき、この授業が有意義であったものであろうと、職員としてはうれしく思っています。この授業を通して得られたことを、この先の進路においても、何らかの形で役立ててもらえれば幸いです。一年間お疲れ様でした。

 

開校式での長谷川准教授による講義

校庭でのコンパス測量

測量結果をまとめる内業

苦労したレベルの設置

チェーンソーの取り扱いについて学習

刈払い機による下刈体験

アマゴの捕獲調査(神戸大の研究補助)

樹木識別実習

チェーンソーによる伐採体験

ホイールローダの操作体験

コンパス測量によるプロット設置

天然林での毎木調査

 

雪化粧の新年

2022年がスタートしました。

昨年末は寒波の影響で10㎝程度の積雪がありましたが、その後は穏やかな天気が続き、新年仕事始めは積雪の少ない状態でしたが、1月6日は早朝から雪が降り積もり、昼頃までに7㎝程度の積雪になりました。

和歌山研究林は他の研究林と比べて積雪は少ないですが、谷底にあることから冬季は日が当たらず冷え込みも厳しいため、一旦積雪があるとなかなか解けません。さらに、路面に解け残った雪があると、夜間の冷え込みにより凍結し、車両で事務所から公道に出る急傾斜の取り付け道を登る際にスリップして危険なこともあるため、こまめな除雪が必要になります。今回の雪は午後には止み、これ以上の積雪はなさそうですが、なるべく路面に雪を残さないよう丁寧に除雪を行いました。

本年も災害や事故のない一年になりますよう、よろしくお願い申し上げます。

※冬期間において和歌山研究林へは、冬用タイヤ等の装備でお越しいただくことを推奨いたします。

雪化粧の事務所構内

雪化粧のモミ・ツガ林

雪化粧のさがり滝

除雪後の事務所構内

 

避難訓練の実施

12月17日に避難訓練を実施しました。

和歌山研究林の事務所は、河川の近くにあるため、大雨や台風による土砂災害が発生しやすい箇所に位置しています。さらに僻地にあるため、道路が遮断された場合は孤立する恐れもあります。このため、大雨などの災害を想定した避難訓練を定期的に実施しています。

今回は集中豪雨によって河川の水位が急激に増水し、事務所やそれに通じる道路における土砂災害の危険性が高まった状況を想定し、事務所から第一避難場所への車両による迅速な移動を想定した避難訓練を行いました。

職員全員で従来より作成されている避難マニュアルを確認した後、訓練を開始しました。雨量や河川の水位状況を確認して避難計画や役割分担を決め、それぞれが避難道路の安全確認、事務所内の電気・ガス設備の停止、戸締りや持ち出し物品などの確認を行った後、集合場所に集まり安否確認をし、車両により避難場所へ全員で移動しました。

訓練後は振り返りを行い、実際の避難時に想定される問題箇所の確認、無線や携帯電話の通信状況の確認、より迅速な状況判断の必要性などについて職員全員で共有しました。

近年はこれまで経験したことがない集中豪雨が発生する頻度が高まり、大雨に対する備えが重要となり、より迅速な状況判断が必要となります。山地にある研究林では常に災害の発生する恐れがあり、このような訓練を通じていざという時に備えています。

 

 

ブレーカーの電源停止

高台の集合場所に集合して、点呼

避難場所に無事到着しました

避難経路上での危険個所を確認します

モニタリングサイト1000事業の毎木調査

12月2日より、環境省モニタリングサイト1000事業での毎木調査を実施しています。
モニタリングサイト1000とは全国1000カ所程度のモニタリングサイトにおいて、生態系の指標となる生物種の個体数変化等のデータを長期間継続的に収集していく事業です。
和歌山研究林では、その事業における「森林系コアサイト」として2005年より9林班八幡谷学術参考林(モミ・ツガの天然林)内に1haの調査プロットが設置されており、毎木や落葉・種子、甲虫、鳥類の調査を実施しています。

毎木調査は毎年実施しており、プロット内に生育する胸高周囲長が15cm以上のすべての樹木を対象に、樹種、太さ、位置を記録しています。前回の調査と同じ個体について、生死の確認、胸高周囲長の測定、新たに周囲長15cm以上になった個体の記録を行います。※胸高周囲長とは地上1.3mの位置での幹の周囲長で、樹木の太さの指標となり、毎回同じ位置で測定できるよう幹に目印(ライン)をつけています。

また、測定位置には釘などでタグをつけることはせず、マーカーで個体番号や測定ラインを記入するようにし、幹に傷をつけないよう配慮しています。タグは樹体への影響が少ないと思われる谷側の地際に釘で取り付けています。

和歌山研究林のサイト内には約1,600本の調査個体が生育しており、3日程度かけて調査を行います。
調査は3.4人の職員が協力して行い、測定者(2.3名)、記録者(1名)に分担して行います。
中には胸高周囲長が3mを超える個体もあり、メジャーを幹に巻き付けて測定するのが大変なこともあります。

このような地道な調査を長期間続けることにより、森林や生態系の動態の解明につながる一役を担っています。

 

調査は測定者と記録者に分担して行う

幹にマーカーで個体番号と測定位置を記入する

記入された番号と測定ライン

太い個体は幹にメジャーを巻き付けるのが大変

新たな個体は地際にタグを釘で取り付ける

調査地の林況(モミ・ツガが優占する)

環境系プロジェクト(有田川水質調査)

和歌山研究林では、環境系プロジェクト研究の一つとして、2005年より有田川流域の水質調査を継続して実施しています。研究林のある有田川源流部(支流の湯川川)に始まり、最下流の有田市古江見に至る約60kmの区間に12か所の定点採取ポイントを設け、定期的に水質測定とサンプルの採取を行っています。

10月27日に水質調査とサンプル採取を行いました。pHとEC(電気伝導度)はその場で測定します。また、フィルターでろ過したサンプル用の河川水はフィールド研に送付し、より高度な分析が行われます。

このような調査を長期間継続して行うことにより、森林や農地・都市部から河川へ流れ出す様々な物質の動きを知ることができ、長期的な環境の変化を把握することにつながります。

 

 

採取ポイント(上流部)

採取ポイント(下流部)

pHとECの測定

サンプルの採取

固定標準地と歩道巡視

研究林内の9林班で実施された和歌山県による保育間伐事業地の確認調査を行いました。

事業地内に2か所の固定標準地が設けてあり、歩道を歩いて標準地まで向かいます。歩道は毎年整備していますが、総延長が非常に長いため、全区間を整備するのは難しい状況です。近年多発する災害の影響もあり、所々で崩壊地などがみられ、このため通行の危険な個所もありました。歩道が消失している箇所もあり、行先を見失いながらも、何とか2か所の固定標準地にたどり着き、無事に調査ができました。当研究林は急斜面が多いことに加え、地盤がもろく歩道以外を歩く場合は滑落や落石の危険性が常にあります。このため、安全に林内を移動するためには歩道の整備が欠かせないことを実感しました。

 

人工林内の歩道を下る

崩壊地を横切る

固定標準地の調査木

倒木などにより歩道が分断されている

保育間伐後の固定標準地

秋の花 アケボノソウが花盛り