里山資源保全学分野 柴田 昌三 教授
少人数セミナー「木造校舎を造る:木の文化再生へ」は2010年度も例年通り10名の登録者を迎えて行った。登録者はすべて一回生で、所属学部の内訳は、法学部1名、経済学部1名、薬学部1名、工学部6名、農学部1名(男子8名、女子2名)であった。実際に講義を受けに来た学生数は平均すると毎回7名程度と、例年よりもやや少なかった。
今年度の少人数セミナーを担当したのは、地球環境学堂の小林正己教授と小林広英准教授、フィールド研の芝正己准教授と柴田である。小林教授と小林准教授には、京都大学が知的財産権を有し、耐震性に優れた木造構造物である京大フレーム工法に関する講義や日本の木造建築物に関する講義等をいただいた。芝准教授及び柴田は、日本の森林に関する総論的な知識を伝えたほか、木質資源を供給する人工林や里山等の現状を紹介した。
学内における講義はすべて、京大フレーム工法によって京大キャンパスに最初に建てられた、実験的構造物である建物を使って行った。これらの講義に加えて、二回の学外での実習も行った。芝准教授による京都府立植物園見学と、柴田によるフィールド研上賀茂試験地における伐木・製材体験である。植物園においては木本を中心とするさまざまな植物種を学び、その高い多様性と豊富さを学ぶことを目的とした。学生たちは植物の豊富さを学ぶとともに、その中から有用な植物を学ぶこととなった。
上賀茂試験地においては、試験地の技術職員の懇切丁寧な指導を受けながら、まず試験地内にあるヒノキを自らの手でチェーンソーを用いて伐採した。伐採したヒノキを作業小屋に運んだあと、昨年の受講生が伐採し、乾燥させてあったヒノキ材を用いて製材を経験した。乾燥させたヒノキは加工するには十分な状態になっており、すばらしい香りのヒノキ材を製材することができた。製材後の木材は適当な大きさに切り、まな板に加工した。学生たちはサンドペーパーで表面を磨き上げ、仕上げた。これは彼らに持ち帰ってもらい、使ってもらうよう、お願いした。これらの見学及び体験実習は、従来の一コマの時間では行い得ないため、午後半日を用いて行わざるを得ない。そのため、過密な受講スケジュールを組んでいる学生たちの中には参加できない者もいた。このことは残念なことであるが、現状のカリキュラムのシステムの中では致し方のないことである。
講義終了後の学生たちからのアンケート結果を見ると、木造建築のみを学ぶつもりで受けた講義が予想外に木材生産も含めた講義であったことを感謝し、実際に生産の場も体験することができたことを高く評価するものが多かった。